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マウスピース矯正にかかる期間は?症例別の目安と予定通りに治療を終わらせるポイント

「マウスピース矯正がたったの3か月で完了!」

このような広告を目にして「本当にそんなに早く終わるの?」と思ったことはありませんか?

もちろん、全ての方が3か月で終わるわけではありませんが、歯並びの状態によっては、実際に短期間で治療が完了するケースもあります。

この記事では、症例ごとのマウスピース矯正にかかる期間の目安や、長引く原因、予定通りに終えるためのポイントなどをわかりやすく解説します。

ブライフ歯科 院長 / 日本矯正歯科学会認定医 平塚 泰三(ひらつか たいぞう)

ブライフ矯正歯科 院長
平塚 泰三(ひらつか たいぞう)

東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業後、1年間の研修医を経て東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野に入局。大学院を修了し歯学博士を取得。関東を中心に複数の歯科医院にて矯正担当医として勤務。2021年11月に静岡県静岡市にてブライフ矯正歯科を開業。正しい矯正歯科治療を適正な治療費で提供するように努めている。日本矯正歯科学会認定医。

矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。
一般的な治療期間:2年から3年、一般的な通院回数:20回~30回
矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用:痛み ・口腔内不潔域の拡大と自浄作用の低下・歯根への影響(歯根の短小、歯の失活、歯肉退縮、歯根露出、失活歯の歯根破折)・顎関節症状・後戻り·加齢による変化・骨癒着

マウスピース矯正にかかる期間はどのくらい?

マウスピース矯正は、複数枚のマウスピースを1〜2週間おきに交換しながら少しずつ歯を動かしていく治療法です。

1枚のマウスピースで動かせるのは約0.25mmとごくわずかな量です。

そのため、もとの歯並びから大きく歯を動かしたい場合は、その分マウスピースの枚数が増え、期間も長くなります。

以下では、部分矯正、全体矯正それぞれにかかる期間の目安と、治療後の歯並びを安定させる保定期間について詳しく解説します。

部分矯正なら数か月程度で可能なことも

部分矯正の平均的な治療期間は、半年〜1年ほどです。

「数か月で治療可能」とうたっているマウスピース矯正は、この部分矯正を指します。

部分矯正が適応となるのは、前歯に軽度のズレがあるものの、奥歯の噛み合わせには問題のないケースです。

基本的に前歯(犬歯まで)しか動かせないため、前歯のガタつきや出っ歯を治すために、奥歯も動かす必要がある場合は部分矯正の対象にはなりません。

全体矯正の目安は1〜3年

全体矯正は、前歯だけでなく奥歯も含めた歯列全体を動かして、見た目と噛み合わせを整える本格的な矯正治療です。

治療期間は1〜3年程度、平均で2年程度が目安となります。

歯並びや噛み合わせのズレの程度、抜歯の有無などによって個人差があるため、治療期間には幅があります。

矯正後の歯並びを安定させる「保定期間」は約2年

矯正歯科治療で動かした直後の歯は、周りの骨が安定していないため、何もしなければもとの位置に戻ろうとする「後戻り」が起きてしまいます。

この後戻りを防ぎ、整った歯並びを定着させるために「リテーナー」という装置を装着する期間が保定期間です。

保定期間の目安は、歯を動かす矯正期間と同じくらい必要で、一般的には2年程度となります。

リテーナーの装着時間は、歯科医師の指示によりますが、最初の1年は終日使用、2年目以降は徐々に減らし、最終的には就寝時のみとなる場合が多いです。

【症例別】マウスピース矯正の治療期間の目安

ここからは、以下の4つの症例のマウスピース矯正にかかる期間の目安を解説します。

・軽度のガタつきがあるケース
・出っ歯のケース
・受け口のケース
・抜歯が必要なケース

ご自身の歯並びに近いケースを、参考にしてみてください。

軽度のガタつきがあるケース

ガタつきが軽度の場合、治療期間の目安は数か月〜半年程度です。

歯並びが比較的整っており、噛み合わせにも問題がないケースで、前歯1〜2本にわずかな重なりがある程度なら部分矯正の適応となる可能性が高いでしょう。

すきっ歯で1〜2mm程度の隙間を閉じたい場合や、矯正治療後の前歯のわずかな後戻りにも部分矯正が向いています。

出っ歯のケース

軽度の出っ歯なら部分矯正で半年〜1年程度、中等度〜重度の出っ歯の場合は全体矯正が必要で、1年半〜3年程度かかるのが一般的です。

軽度とは、前歯がわずかに前に傾いているだけで、奥歯の噛み合わせに問題ないケースを指します。

しかし、出っ歯の多くは単に歯が傾いているだけでなく、顎のスペースが不足していたり骨格的に骨が前に出ていることが原因です。

その場合、前歯を後ろに下げるためのスペースづくりに奥歯の移動や抜歯が必要になる場合があり、1年以上の期間がかかるケースが多くなります。

受け口のケース

マウスピース矯正で治せる受け口は、歯の傾きが原因で噛み合わせが逆になっている「歯性の受け口」の場合です。

このようなケースでは、奥歯を少しずつ動かして噛み合わせを整える全体矯正が必要で、期間は1〜2年、症状によっては3年近くかかる場合もあります。

一方で、下顎の骨が大きく成長している「骨格性の受け口(しゃくれ)」は、マウスピース矯正だけでは治療が難しく、外科手術が検討されるケースも少なくありません。

骨格的な異常が「顎変形症」と診断され、認定を受けた医療機関で外科手術を行う場合には、保険が適用されることもあります。

抜歯が必要なケース

抜歯を伴うマウスピース矯正は、抜歯をしないケースに比べて治療期間が長くなる傾向で、2〜3年かかる場合が多いです。

歯並びのガタつきが非常に大きいケースや、口元の突出感を改善したい場合で、歯を並べるためのスペースが足りないと判断されたときには抜歯が必要になります。

治療期間が長くなる理由は、抜歯によって作られたスペースを閉じるのに時間がかかるためです。

たとえば、小臼歯(前から4番目か5番目の歯)を抜歯する場合、歯1本の幅は約7mm、左右上下で4本抜歯すると合計で約28mmものスペースができます。

マウスピース1枚で動かせる量は約0.25mmなので、全体で約3cm分ものスペースを閉じるには必然的にマウスピースの枚数が多くなり、期間も長くなります。

また、抜歯症例はマウスピース矯正の中でも特に精密な計画が必要な治療です。

対応できるマウスピースの種類や、治療経験のある歯科医師が限られる場合があるため、事前に実績などをしっかりと確認することが大切です。

マウスピース矯正の期間別にみる見た目の変化

マウスピース矯正で歯列全体を整えるのには、1年以上かかるのが一般的ですが、見た目の変化は早い段階から実感できることがあります。

ここでは、抜歯なしで1年半の治療計画を立てた方を例に、期間ごとの変化の目安を紹介します。

ただし、歯の動き方には個人差があり、もとの歯並びや治療計画によって変化を感じるタイミングが異なるため、以下はあくまで一例です。

期間
歯の移動量の目安
見た目の変化の目安やポイント
1か月 約0.5〜1mm(マウスピース2〜4枚分) 見た目でわかる変化はほとんどないが、マウスピースを外した際に噛み合わせの変化を感じることがある。
3か月 約1.5〜3mm
(6〜12枚分)
少しずつガタつきが改善され始め、写真比較では変化に気づけるようになる。
6か月 約3〜6mm(12〜20枚以上) ガタつき・出っ歯などに明らかな変化が現れ、周りの人から気づかれることも。
1年 約6〜9mm
(30〜36枚分)
歯の移動の大部分が完了。歯並びが全体的に整い口元の印象が変わる。
ここからは、微調整や噛み合わせの調整などの仕上げの時期に入っていく。

マウスピース矯正の期間が長くなる原因

マウスピース矯正は、動きをコンピューター上で細かく設計するため、治療前に期間の目安を計算することが可能です。

しかし、次のような理由で、計画より長引いてしまうことがあります。

・マウスピースの装着時間が足りない
・虫歯や歯周病がある
・歯の動きが遅い
・予定通りに通院しない

治療期間が長引く原因を知り、注意点をあらかじめ覚えておきましょう。

マウスピースの装着時間が足りない

マウスピース矯正は、1日20時間以上の装着を前提に、歯が計画通りに動くように設計されています。

装着時間が短いと、せっかく動いた歯がもとの位置に戻ろうとする力に負けてしまい、なかなか治療が前に進みません。

また、「外したままつけ忘れてしまった」「マウスピースの交換日をうっかり過ぎてしまった」などといった自己管理の甘さも期間が延びる原因です。

虫歯や歯周病がある

マウスピース矯正中に、虫歯や歯周病などのトラブルが起きてしまうと、進行度によっては矯正歯科治療の一時中断が必要です。

大きな虫歯で被せ物が必要になった場合には、歯の形が変わるため、もとのマウスピースがはまらなくなることもあります。

治療の中断やマウスピースの再製作をする場合は、数週間から数か月単位で治療計画が遅れてしまいます。

歯の動きが遅い

治療計画を立てる際には、レントゲン上で顎の骨や根の状態を確認し、一人ひとりに合った治療の進め方や期間の目安を立てます。

ただし、歯の動き方には個人差があり、必ずしも想定通りの動きをするとは限りません。

矯正歯科治療は、歯の周りの骨が溶ける「骨吸収」と新しくできる「骨再生」を繰り返しながら歯を動かしていきます。

一般的には若い方のほうが新陳代謝が活発で、骨の作り替えがスムーズなため、歯が動きやすいです。

予想以上に歯の動きが遅い場合には、マウスピースの交換期間を延ばすなどの調整が必要になり、結果的に期間が延びることがあります。

予定通りに通院しない

マウスピースは自宅でご自身で交換していきますが、歯科医院への定期的な通院も不可欠です。

通常、1〜3か月に1度の通院で、歯科医師が以下の点をチェックします。

・マウスピースが歯にしっかり合っているか
・計画通りに歯が動いているか
・アタッチメント(歯の表面につける突起)が外れていないか
・虫歯や歯周病などのトラブルはないか

自己判断で通院を怠ると、治療計画と実際の歯の動きにズレがあっても気づけません。

歯の動きが追いついていないまま次のマウスピースに進んでしまうことで、マウスピースがしっかりとはまらなくなり、計画の大幅な見直しが必要になるリスクがあります。

当院では「Dental Monitoring」という遠隔診療アプリを使用し、通院せずにマウスピースの進捗をチェックできるため、そういったトラブルを未然に防ぎつつも通院回数を減らすことが可能となっています。

マウスピース矯正を予定の期間通りに進めるためのポイント

マウスピース矯正をムダに長引かせることなく進めるためには、以下のような患者さん自身の行動も必要になります。

・1日20時間以上、正しく装着する
・マウスピースを丁寧に取り扱う
・口腔ケアを徹底する
・経験や実績のある歯科医師を選ぶ
・治療を加速させるオプションを検討する

具体的なポイントを詳しく解説します。

1日20時間以上、正しく装着する

1日20時間以上の装着は、予定通りに治療を終えるための絶対条件です。

20時間は長いと感じるかもしれませんが、食事や歯磨き以外の時間は常に装着する習慣さえつければ、問題なく続けられます。

1日の食事時間は、3食あわせても2時間以内の方がほとんどなので、1日4時間外せる時間があると考えれば、余裕をもって食事やおやつの時間を楽しめます。

また、ただ装着するだけでなく「正しく」装着することも重要です。

装着の際は指でしっかり押し込んだあと「チューイー」と呼ばれるシリコン製のチューブを噛んで、歯とマウスピースをしっかり密着させます。

このひと手間で治療の精度が高まり、効率よく歯を動かすことができるのです。

マウスピースを丁寧に取り扱う

頻繁にマウスピースをなくしたり、破損させたりすると、その都度治療が中断してしまいます。

以下のことを心がけ、マウスピースを丁寧に扱うことが大切です。

心がけること
詳細
外したら必ずケースに入れる
・ティッシュに包んで置いておくと誤って捨ててしまう原因になる
・食事で外すときは必ずケースに入れる習慣をつける
食事中は必ず外す
装着したまま食事をすると、マウスピースの変形や破損、汚の原因になる

万が一、マウスピースをなくしたり壊したりした場合も、自己判断で次に進んだり、そのまま長時間外しっぱなしはNGです。

一旦、ひとつ前のマウスピースを装着し、すぐに歯科医院に連絡しましょう。

新しいマウスピースを再注文するか、問題がなければ歯科医師の指示により次のマウスピースに進むこともあります。

口腔ケアを徹底する

治療期間が長引く原因の一つである、虫歯や歯周病を防ぐため、毎日のセルフケアをこれまで以上に徹底することが大切です。

歯に汚れが残ったままマウスピースを装着すると、汚れを中に閉じ込めることになり、細菌の繁殖リスクが高まります。

また、プラーク(歯垢)は歯ブラシだけではおよそ6割しか落とせないといわれています。

フロスや歯間ブラシ、ヘッドの小さいタフトブラシなども使い、細かい部分までしっかりと汚れを落としきりましょう。

とはいえ、食事のたびに時間をかけて磨くのが難しいこともあります。

その場合は、特に虫歯や歯周病菌が活発になりやすい就寝中に備え、寝る前にじっくり時間をかけてケアする習慣をつけると効果的です。

経験や実績のある歯科医師を選ぶ

マウスピース矯正をスムーズに進めるには、どの歯科医院を選ぶかが治療の質に大きく関わってきます。

同じような歯並びでも、歯科医師が行うマウスピースの設計によって、治療期間や仕上がりが変わります。

また、ワイヤー矯正の技術も高い歯科医師であれば、マウスピースで動きにくい部分に一時的にワイヤーを使うなどして、効率的に治療を進めることも可能です。

経験や実績が豊富な歯科医師は、歯が予想外の動きをした場合にも、的確に軌道修正する技術力を持っています。

治療を始める前には、複数の歯科医院でカウンセリングを受け、治療方針や費用、期間について納得いく説明をしてくれる信頼できる歯科医師を見つけましょう。

治療を加速させるオプションを検討する

少しでも治療期間を短縮したい、という方のために「光加速矯正装置(オルソパルス、PBMヒーリングなど)」を扱っている矯正歯科もあります。

この機器は、1日8分または10分、近赤外線を歯に照射することで細胞を活性化させ、痛みの緩和や歯の動きを早める効果が期待できるとされています。

安全性と効果は、複数の論文で報告されていますが、どのくらい期間が早まるかは個人差があり、絶対的な効果を保証するものではありません。

また、機器の購入に別途費用がかかることや、全ての矯正歯科で扱っているわけではない点にも注意が必要です。

マウスピース矯正の期間に関するよくある質問

最後に、マウスピース矯正の期間に関するご質問にお答えします。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正は、どちらが長期間かかる?

治療期間は、ワイヤーかマウスピースかの「治療法」より、歯並びの程度などの「症例」で決まるため、どちらを選んでも期間に大きな差がないことが一般的です。

ただし、ワイヤー矯正とマウスピース矯正には、それぞれ得意・不得意な動きがあります。

・ワイヤー矯正が得意な動き:歯を大きく移動させる、ねじれを治す
・マウスピース矯正が得意な動き:奥歯を後ろに動かす、傾きを整える

期間をできるだけ短くしたいのであれば、ご自身の歯並びにとって、より効率的に動かせる治療法を選ぶのがポイントです。

今からマウスピース矯正を始めて1年後の結婚式に間に合う?

全体的に歯並びを治す場合、完了までは1年以上かかることがほとんどですが、見た目に関しては1年以内に改善できる可能性があります。

抜歯を伴わないケースでは、矯正開始から比較的早い段階で改善がみられ、6か月程度で見た目の変化を実感できることもあります。

結婚式などの特別なイベント時に、自身で取り外せることもマウスピース矯正の利点です。

間に合わせたい期日がある場合は、治療計画が変わる場合があるので、わかった時点で歯科医師に相談しましょう。

期間が延びてもいいので寝るときだけの装着でもいいですか?

マウスピース矯正は、1日20時間以上の装着が前提の治療で、就寝中のみでは効果を発揮するのが難しくなります。

就寝中の7〜8時間程度では、外している時間の方が長く歯が動かないばかりか、せっかく動いた分ももとに戻ってしまい治療が前に進みません。

あなたに合ったマウスピース矯正のスケジュールは矯正歯科で相談を

マウスピース矯正にかかる期間は、もとの歯並びの状態や治療の内容によって異なり、全体矯正の場合は1〜3年が目安です。

マウスピースの装着時間は1日最低20時間。

装着時間を守れないと、計画通りの期間で治療を終えることができません。

継続させるためには、外出時はケースや歯ブラシを持ち歩くことや、アプリで装着時間や交換時期を管理することなど、自然に習慣化できる工夫が効果的です。

また、「この日までに整えたい」といった明確な目標をもつことで、モチベーションを保ちやすくなります。

もし、大切な行事やライフイベントに向けて治療を進めたい場合は、今からだとどのくらい改善できるのか、矯正歯科で具体的に相談してみましょう。

静岡市にあるブライフ矯正歯科は、患者さまのご希望や精密な検査をもとに、無理なくスムーズに進められる治療計画をご提案しています。

最後までしっかり続けられるよう、スケジュール管理やモチベーション維持などのサポート体制も整えていますので、ぜひ一度ご相談ください。

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